前置き
おいしい「地域」をつくること

ボクは2017年から2020年の2年半の間、福岡県の大川市というところで農業振興関連の
地域おこし協力隊に赴任していました。当時は就農を考えていたので就農する前の
パイロットという位置づけで東京から福岡に引っ越しました。なお今回は産地
ブランド化という観点での話なので農業をやっていた時の具体的なこと話は割愛します。
概要だけ話すと、最初の1年半は自分でヨーロッパ野菜を中心に少量多品目で
ビニールハウス1棟を借りいろいろな野菜を栽培してました。
1年半たったところでやりたい農業のスタイルと当時の大川でできること、自分が
持っている資本(人間関係資本含む)を鑑み、いま(当時)は農業をやる時期
ではない、と悟ったので就農はやめることにしました。
それからどうしようかと迷っていた時期に産地ブランド化の事業を始める話があったので
1年トライすることにしました。ちなみにボクは事務局担当でした。
ブランド化の推進方法は何通りかあると思います。今回お話しする事例はそのうちの1つ
という具合にとらえていただければと思います。

野菜


産地ブランド化をどのように行うか? 
プロジェクト手法

新規事業は通常プロジェクト、という形で実験しながら実施されます。もちろんプロジェクト
開始前に企画は考えます。「誰が、何を、いつまでに、どこで、どのように行うか?」
という5W1H、というやつです。またそのプロジェクトをやった後でどのような成果が
ステークフォルダーにもたらされるか、そのもたらされる内容も定量的な話(要はお金。
経済的に持続可能か)と定性的な話(地元が明るくなった、プライドを持てるようになれた)
を目標に沿え、それを目指して推進していきます。
プロジェクトによってはアジャイル(プロジェクトをやりながらPDCAを回し、ちょっと頑張れば
達成できる目標を都度都度設定するやり方)を行う場合もあります。



具体的なプロジェクトの内容

プロジェクトイメージ

プロジェクトの内容はボクが生産していた
ヨーロッパ野菜など珍しい野菜を少量多品目で
生産することでした。生産するだけでは芸がないの
である付加価値をつけ、食べ方など提案し、
できるだけ高く販売できるよう知恵を絞り、
実践することでした。



プロジェクトを進める中で・・

当初ボクの案では上質な堆肥を使い、味が濃い野菜をつくる、ことを
目指していました。そのため土づくりの分科会も企画しました。けれどこの点はとりあえず
「竹パウダー」を使っただけでそれ以上の土づくりの研究はできなかったです。
あと大川市の利点として郵便番号が831で始まる番号だったので「野菜の街から美味しい野菜を」
、ということも考えたけれどこれも1年で成果はでなかったです。これだけだとダメな子という
印象ですが、当初考えていなかった成果もありました。



考えていなかった成果

このプロジェクトではステークフォルダーは「農業生産者」「飲食店オーナー」と専門家
(具体的には県の農業指導センターの職員、野菜ソムリエ)と地元JA、事務局が
市役所、という感じでスタート。プロジェクト規模が大きくなった時点で道の駅や
流通業者、小売業者を巻き込む、というシナリオでした。

ステークフォルダー図

考えていなかった成果のプレイヤーは「飲食店オーナー」いわゆる料理人でした。



バリューチェーン

バリューチェーンは価値が連鎖的にチェーンのようにつながること。これはある人が
生産したものを次のステージにおいて関わるステークフォルダーがさらに価値を高め
次にバトンを渡す。このような連鎖でもともともっていた製品の価値が高められることだと
思います。この前提に立ってこのプロジェクトにバリューチェーンを当てはめると、
農家さんが生産する → 料理人が文字通りその素材を料理することによって素材の持ち味を
最大限に引きだしその素材の価値を高める。ボクはこの一連の流れの一部始終にかかわり
時には食べる人の立場になってアイデアを出したりしました。

ビーツ
ビーツスムージー
イベントチラシ


結論 究極のコラボレーション

ボクが経験したことはプロジェクトの一部、最初の1歩にすぎません。
産地ブランド化、というには全然足りないものだと思います。
ブランドとは顧客が信頼して製品なりサービス購入できる「概念」
であると思います。ブランドはブランドという概念を端的に表すために「意匠」など
イメージを含んだ形で顧客に提示されるものだとも思います。
ただボクが経験したことは、産地ブランド化で一番必要となる「ベース」部分
を1つ1つの「過程」を自分が気づきや発見をもって体験することができた
ことだと思います。
一人でブランドを作っているのでなければ顧客に提示、販売する製品、サービス
はさまざまなひとを介して世に出ます。この様々に人を介して世に出るためには様々な
人がその人にしか出せない「付加価値」を1つの製品に1つずつのっけていく
営みだと思います。

産地ブランド化のやり方はいくらでもあります。ただボクが感じた産地ブランド化
に大切なことは産地に住む方々はじめ消費者にものが提供される過程にかかわる
関係者のみなさん、場合によっては消費者も巻き込んで付加価値をチェーンのよう
に連鎖させることで完成する究極のコラボレーションだと思います。



補足

ブランド化推進プロジェクトには当たり前ですがお金(コスト)がかかります。
うまく作れるかどうかわからないもの、またうまく作れても売れるかどうか
わからないものを生産者の方に作ってもらうので基本全量買い取りの形をとる
と思います。その他専門家の方々をメンバーに巻き込む場合はその人件費も
必要になります。あと飲食店の方々もメニューの考案などで時間を使います。
要はお金が必要になります。
お金をクラウドファンディングやCSAで調達できればいいですが、結構そうなる
と大変なので自治体から補助金を受ける形が多いと思います。その場合は
補助金の受け皿の任意団体を設立します。たまたまボクが携わったプロジェクト
は研究部会的な任意団体があったので団体設置はやらなくてよかったのですが、
団体がない場合はメンバーを募り、規約を作り、総会などを開いて団体として
の体をなさないといけないので結構大変な作業になると思います。

当時の状況
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