おいしいものの表現
ひとはおいしいものを表現するとき、端的に、でも感情を込めて短いことばで表現する。
「うん、旨い!!」という具合だ。
きっと本当に感動する食べ物、料理はシンプルに表現されるのだと思う。
いろいろ形容詞がつくと「その感動」がダイレクトに表現できないからだと思う。
では美味しいものっていったいどんなものだろうと考えてみようと思い1冊の本を読んでみた。
栗原堅三著「うま味って何なんだろう」
栗原堅三さんは、1936年横浜市生まれ。東京工業大学博士課程を修了。理学博士で東京工業大学助手、シカゴ大学およびフロリダ州立大学博士研究員、北海道大学助教授、教授、学部長、青森大学学長というご経歴の方です。日本薬学会賞、日本味と匂学会賞などを受賞されています。
ボクが読んだのは彼の著作の「うま味って何なんだろう」という本です。
この本は岩波ジュニア新書なのでそれほど難しい文体ではなく、とてもスラスラ読めた印象です。
たべものの味

食べ物の味は驚くほど少数の成分で決められてしまいます。
基本の味は「甘味」「酸味」「塩味」「苦み」「うま味」。
なお1990年まで欧米人は「うま味」という味は存在しない、とみなしていた、とのことです。
日本人は1960年代から神経生物学者が味の情報を伝える味神経の電気信号を測定してうま味に関する定量的な実験を行っていましたが、欧米の学術誌に掲載を求めてもことごとく却下されていた、とのことです。
その後日本で「うま味」は存在する、と主張し続け、うま味研究会を1982年(昭和57年)発足。
1990年代までにデータが蓄積され5番目の基本味であることが合意された2000年代になると下の
味蕾のなかにうま味受容体(センサー)が存在することが明らかになります。うま味を表現する語彙は
日本産です。だから英語でも「umami」※Wikpwdia、と表現されます。
旨味物質と呼ばれるもの主な物質は、
グルタミン酸塩(昆布の旨味成分)
イノシン酸塩(鰹節の旨味成分)
グアニル酸塩(シイタケの旨味成分)
です。だいぶ前に「味の素」のCMで宣伝されていたやつです。
旨味物質は単独ではうまくない
旨味物質は単独で舐めてもそれほどおいしいものではありません。ただしカニでもホタテでも旨味物質がないと本来のおいしさは出ないのです。旨味物質はいろいろなほかの味と共存することで絶妙な味のバランスを整える役割を果たします。特に重要なものが「塩」になります。
理由は、多くの食品の味はアミノ酸の組み合わせで決まっているのですが、食塩が存在しないとアミノ酸の味が引き出せないためです。
それと、旨味成分は相乗効果があるので、単独でほとんど味がしないような薄いイノシン酸溶液でも、グルタミン酸溶液を混ぜるとものすごい旨味が出ることがあるとのことです。隠し味で少し何かを料理に足すことがありますが、
このように「うま味」を増すために入れる、ということもあるのかなと思います。
干しシイタケがなぜおいしいか

シイタケが干されると細胞が破壊されリボ核酸が分解酵素の働きにより分解されグアニル酸が増えるためです。
ちなみに干しシイタケを調理に使うため水に戻すときは低い温度の水で浸さないとダメです。理由はグアニル酸を分解する酵素の活性は45~50℃で最大になるためこれ温度以上ではグアニル酸が分解(破壊)されてしまうからです。
うま味は複雑 発酵へ
旨味は単独ではそれほど「うまく」ないのです。いろいろなものが混ざり合って相乗効果で
「うまく」なるのです。もちろん、いろいろなものを入れすぎたらダメだと思いますが、
ある程度いろいろなものが混ざり合わないとその効果を発揮しないということです。
ですので必然的に複雑なものになってしまうと思います。その証拠として旨味を感じるものは
複雑な加工過程を経る「発酵食品」に多いようです。
具体的には「醤油」、「鰹節」、「チーズ」、「アンチョビ」、「ハム」、「トマトケチャップ」などです。
ちなみにモルジブにはハガツオから作った鰹節があるそうです。
うま味は味のシグナルとしてタンパク質を連想させる効果があると言われています。
タンパク質はアミノ酸がくっついたものなのでタンパク質を微生物で分解させた発酵食品にうま味を
連想させる食品が多いのではないかと思います。なおタンパク質は人間が摂取しないといけない
3大栄養素の1つです。

結論 「うまい」を獲得
人は生きていくために食べ続けていかないといけません。ボクは最初人は「食べる」ことが大変で、
めんどくさいことだったのではないかと思います。
昔は「食べること」で時には死んでしまうこともありました。そして何千、何万年と時を経て、「食べる」という行為で得られることが「生きるために必要な栄養素を摂取」するだけでなく、「うまいということで感動する」という感覚が得られるようになったのでは、と妄想します。